登下校の時間だけ、バスの便は多い。
 それ以外は一時間に一本あるかないか、という程度だ。
 新緑や紅葉シーズンには観光客向けに増台されるけれど、今は梅雨。

 あのあとなかなか眠りにつくことができなかったせいで、起きたら朝の九時を過ぎていた。
 夢はその後、見なかった。
 ぼんやりする頭でリビングに行くと、母はパートに出かけたあとらしく誰の姿もなかった。
 少し、ホッとした。

 このまま休もう、と思ったのもつかの間、期末テストの存在を思い出した。
 四時間目にある数学の担当教諭は厳しく、出席日数次第では期末テストを受けさないと言っているらしい。
 直接聞いたわけじゃなく、クラス委員の松本さんが教えてくれた。

 重い気持ちを引きずり、制服に着替え駅前へ。
 おそらく四時間目には間に合うだろう。

 バスのなかは閑散としていて、もちろん制服姿なのは私だけだった。
 窓の外は雨模様。
 ガラスに引っついた雨粒が流れ、つながり、くだけていく。

 ふいに樹さんの顔が浮かんだ。
 お母さんに聞いたせいでもあるし、夢で話をしたせいでもあるだろう。
 もうずいぶんと会っていない。

 星弥が入院してから、図書館にひとりで行ったのは数回だけ。
 結局、星弥の病気のことも亡くなったことも伝えられていない。