向かい側に座ろうとする私に首を振り、
「こっちのほうがよく見えるから」
 隣の席をすすめてきた。

 言われた通り座る。まだ胸がドキドキしている。
 これはあの日と同じ? それ以上?
 願うのは、このまま夢が続いてほしいということ。

 夢のなかの私は館内を見渡す。
 天井にあるいくつもの照明はオレンジ色。
 図書館というより、博物館みたい。
 エジプト展覧会に行ったときもこんな薄暗い照明だったっけ。
 それはそれで雰囲気があったけれど、図書館向きとは言い難い。

 私の言いたいことがわかったのか、星弥はテーブルに置いてあるスタンド台のスイッチを入れた。
 とたんに真っ白な光が机全体に広がった。
 机を縁取るようにLEDが設置されているみたい。
 真上から一本の電球が垂れさがっており、同時に点灯する仕組みのようだ。

 星弥の顔が白い光に照らされ、幻想的に見えた。
 恋人みたいに隣同士で座っていることが急に恥ずかしくなる。

 一度は体験した出来事なのに、初めてのことに思える。

「月穂の顔、ライトのせいで真っ白に見える」
「星弥だって真っ白だよ」

 普通っぽく言い返しているけれど、冷や汗が流れそうなほど緊張している。
 
 星弥は無邪気に声にして笑った。