「長谷川です。この小さな図書館の館長をしています。といっても、職員は私ひとりですが」
「樹さん、月穂は俺のクラスメイトなんだ」

 星弥の紹介に、私はもう一度頭を下げた。
 館長さんは穏やかにうなずいたあと、
「彼、変わっているでしょう?」
 いたずらっぽい口調で尋ねてきた。
 見た目がキマっているだけに、意外な一面を見た気になる。

「変わってますね」
「あの、本人がここにいるんですけど~」

 なんて、星弥がツッコミを入れてきた。

「星弥君は、この近くにある高校を受験するそうです」
「はい、さっき聞きました」

 私も受験します、と宣言したかったけれど、まずはお母さんに相談しないと。
 そもそもどんな高校かもよく知らないし。

 わかってる。
 どんな高校だったとしても、私は志願するんだろうな……。

「この図書館にいつでも通えるようにするために受験するそうですよ」
「え?」

 そんな理由で? 驚くが、星弥はまんざらでもない表情だ。

「だから樹さんに言ってるんだよ。もっとここをはやらせてくれ、って。合格したはいいけど、潰れちゃったなんて悲劇でしかないし」
「大丈夫ですよ」
「いや、全然大丈夫じゃないよ。そもそもお客さん見たことないし」

 ふたりはよくこういう話をしているらしい。
 まるで兄弟くらい年が離れていると思うけれど、ふたりの雰囲気はとても合っている。