離れ離れの高校に進むと思っていたから、急に現れた未来予想図にフワフワ浮かんでしまいそうになるほど高揚感が生まれている。
 続きを聞きたいのに、星弥は「見えた」と道の先を指さした。

「あの建物ってなにかわかる?」

 前方に、小さなグレーの古い建物が見える。
 洋館のような建物は、星弥と一緒に通った図書館だ。
 このときの私はまだ答えを知らない。

「別荘? それよりもさ、さっきのこと――」
「すべての答えはあそこにある」

 まっすぐ指さす彼の前髪が、風のメロディでダンスをしている。

 そう、あの日、絶対に忘れないと誓った美しい横顔。
 当時の感動が、もう一度胸に生まれている。
 もう少し見ていたいのに、星弥はさっさと建物へ足を進ませる。

「ここは、図書館なんだ」
「え、そうなの?」

 驚く私に扉の前で星弥は顔だけふり向いた。

「月穂に見せたいものがあるんだ。じゃあ入ろうか」

 重厚な扉は、気軽に入れる雰囲気とは程遠かった。
 張り紙のひとつもないので、看板がなかったら図書館だとは思われないだろう。