靴を履いて玄関のドアを開けると、
「うわ……」
 まぶしすぎる朝日が攻撃してくる。

 これで梅雨入りなんて、やっぱりテレビなんてろくなニュースを言わない。
 光を見ないようにうつむいたまま門を開ける。

「月穂」

 振り向くとお母さんが玄関先に立っていた。

「どうかした?」
「あ、ううん。気をつけて行ってらっしゃい」

 少し胸のあたりがもわっとしている。
 きっとお母さんは私が無理していることに気づいている。
 そうだよね、長い間一緒に暮らしているんだからわからないはずがない。

 一方、それを指摘することがルール違反ということもわかっている。
 気をつかい合った結果が今だとしたら、『気づかないフリゲーム』を続けるしかないのだから。

「じゃあ、行ってきます」

 カサを少し持ちあげてみせると、お母さんはにっこり笑ってくれた。
 歩き出すと同時に、私の顔から笑みは消えてしまう。
 やっと本当の自分に戻れたみたいで少しホッとする。

 夏服への移行期間も終わりに近い。
 今日から夏服にしたけれど、半袖のせいで朝の風が肌に冷たい。

 大きすぎる通学リュックを背負い、風をかき分けるように駅前へ向かえば、一歩ずつダメージをくらっている気分。
 学校に行こう、という気持ちも一緒にダウンしていくような感覚だ。