「その上に天文台があるのも?」
「ああ……聞いたことはある」

 一般の人が入れない天文台があると聞いたことがある。
 先生が教えてくれたんだっけ……?

「だからだよ」

 よくわからないことを言う星弥に、私は「え?」と聞き返す。
 星弥が歩くスピードを落とし、横に並んでくれた。

「月穂は、まだ月が好きなんだよね?」
「うん」
「そうか」

 うれしそうに言ったあと、「じゃあさ」と彼は続けた。

「俺と一緒にあそこの高校受けない?」
「え……」

 思わず足を止めた私に、星弥は声にして笑った。

「冗談。でも、ちょっと本気だったりもする」
「な、なんで?」

 顔が絶対に赤くなっている。
 まさか、こんなところで言われると思っていなかった。
 同時に、自分があの高校に通う姿が容易に想像できてしまった。