「ねえ、部活に行かなくて本当にいいの?」

 歩き出す星弥に夢のなかの私は尋ねた。
 星弥はキヒヒと笑うと頭のうしろで両手を組む。

「いいって。始業式の日くらいみんな遊びたいだろうし」

 そうだった。
 この日は、私たちの関係が進展した日だった。
 昔あった出来事をそのまま夢で見るなんて不思議。
 夢は、満たされない現実から目を背けさせるために見るものだ、と聞いたことがある。

 星弥の夢だけは避けてきたのに、なぜ?

「空翔は?」

 勝手に私の口はそう尋ねていた。

「あいつはああ見えて真面目だからさ。今ごろ自主練だろ」

 この一年で、私たちの距離は近づいていた。
 ただのクラスメイトから、仲の良いクラスメイトに昇格した感じだ。

 私の片思いも丸一年続いていることになるんだな……。
 甘酸っぱい感情が胸に広がった。

 本当は星弥に抱きつきたい。

 泣きながら名前を叫びたい。

 こんなに強く思っているのに、体も言葉も自由に動いてくれなかった。
 過去の再現を自らおこなっているみたい。