体を元の位置に戻した星弥は、品定めをするように私を見てから「俺はさ」と続けた。

「名前のせいで、星について詳しくなっちゃってさ。星座のことならだいたいわかるんだ」
「私も満月カレンダーは頭に入ってるよ」

 月の満ち欠けは一定周期で起こる。
 それをスケジュール帳に記すのは昔からの日課だった。
 あまり人に言ったことのない特技を、なぜか張り合うようにするりと言葉にしていた。
 星弥は感心したように少し目を大きく開いた。

「てことは、俺たちは名前で人生を左右されてるふたりってわけだ」

 そんなことを言う星弥に噴き出してしまった。

「それは大げさすぎない?」

 同じように笑う星弥の目が、カモメみたいなカーブを描いた。
 同じクラスになって初めて、彼が私にほほ笑んでくれた瞬間だった。

「秘密を教えてあげるよ」

 さっきよりも声を潜めた星弥に、ゆっくりうなずいた。

 一度は経験したことなのに、初めてのように胸がドキドキしている。