過去のやり直しみたいな夢は、今の私にはつらすぎるの。
 なのに、私はあの日と同じように顔をあげていた。

 そこには記憶よりも幼い顔の星弥がいた。
 黒い前髪が無造作に、校則ギリギリアウトくらいに伸びている。
 端正な顔に鋭い眉、唇は三日月みたいに薄い。
 五月というのに焼けた肌で、いつも腕まくりをしている。
 なんとなく人を寄せつけないオーラを感じていたけれど、空翔と一緒にいることが多いせいか、笑っている顔を見かけることも多くなっていた。
 そんな時期だ。

 久しぶりに会う星弥に、夢のなかの私は不思議そうに首をかしげている。

「前から気になってたんだけどさ、白山さんって月穂って名前でしょ?」

 ああ、こんな会話からはじまったんだよね。
 忘れかけていた記憶を、夢が思い出させてくれている。

「あ、うん」
「俺は皆川星弥。つまり俺たちって、星と月なんだよね」
「うん」

 同じ言葉で返す私。
 星弥は軽くうなずいたあと、教壇の上から覗き込むようにぐんと顔を近づけて来た。

「月とかに興味あったりするの?」
「え、まあ……少しは」
「ふうん」