――今日の夢は、あまり好ましくない場面からはじまった。

 教室に私はいる。
 クラスメイトの顔ぶれから見ると、中学二年生の夢だろう。
 黒板に五月十二日と記されていた。

 懐かしいクラスメイトがいくつかのグループに別れ、弁当を食べている。
 スピーカーから流れる校内放送がやけにリアルだった。

 きっとこの夢には星弥が出てくる。
 星弥が亡くなって以来、彼の夢は避けてきた。
 だったら目覚めてしまおう。
 悪夢の時は無理やり目を覚ましてから、もう一度寝ることもあったから。

 が、一向に夢は醒めてくれない。

「ウケるよね」
「マジで」
「ありえないし」

 あきらめて、口々に話をする同じグループの女子を見やる。
 きっとそのうち目覚めるだろう。
 ドッと笑いが起き、私も一緒に笑っていた。

 懐かしい。
 あの頃は、どんな小さなことでもお腹が痛くなるほど笑ったよね。
 お弁当を食べ終わった私は、自分の席へ戻る。
 そうだ、教壇の前の席だった。

 席に着くと同時に誰かが教壇の前に立った。

 ――覚えている。

 中学二年生で同じクラスになった星弥。
 距離が急に近くなったのは、この日の会話からだ。

 やめて、これ以上思い出したくないよ。