ふいにおばさんが握っていた手を離した。

「星弥が亡くなって、七月七日でちょうど一年経つのよね」

 うつむきそうになる自分を奮い起こし、
「もう一年なんて、早いですね」
 と声色を明るくした。

「一周忌をささやかながら自宅でおこなおうと思ってるの。七月九日の土曜日の予定なんだけど、どうかな?」

 さみしげに言うおばさんは、前に会ったときよりも疲れた顔をしている。
 髪にも白いものが目立ち、雨にふられたのかスーツの肩が濡れていた。

「月穂ちゃんの家って電話番号変わっちゃった?」
「あ、そうなんです。なんかインターネット電話みたいなのにしたみたいで……」
「携帯電話の番号もわからないから、空翔くんに伝えてもらえるようお願いしたんだけど、まだ聞いてなかった?」
「あ、空翔から今日聞いたところです」
「よかった。もし月穂ちゃんがよければ、あの子に会ってやって。きっとよろこぶから」

 ジンジンとしびれていくのは、頭も体も心も。

 おばさんは、「また詳しく決まったら空翔くんに伝えるね」と言い残し去って行った。

 ひどい罪悪感が私を支配している。

 やっぱり、今日は学校に行くべきじゃなかったんだ。