「信じられないかもしれないけど、今ちょうど『月穂ちゃん元気かな』って思ってたところなのよ。すごい偶然ね」
 答えられない私に構わず、おばさんは自分の格好を見おろし照れたように首をかしげた。

「去年の秋から仕事をしているのよ。結婚前にいた職場に戻ったの」
「そう、なんですか……」

 喉がカラカラに乾いて、うまく言葉になってくれない。
 元気そうにしなくちゃ、笑顔を作らなくちゃ。

「星弥のお葬式以来ね。あれからもうすぐ一年経つなんて……」

『お葬式』という言葉が耳から入り、喉を通り胸のあたりで止まった。

 息が……吸えなくなる。

 湿っぽい口調になっていることに気づいたのか「でも」と明るい声でおばさんは白い歯を見せた。

「月穂ちゃんのこと心配してたから、会えてうれしい」

 おばさんは元気ですか? 

 仕事を再開したのは、星弥が亡くなったからですか? 

 おじさんはどうしていますか? お兄さんは?

 聞きたい言葉が頭のなかでぐるぐる回っているみたい。
 なのに、どれも言葉にはならず、うなずくのが精いっぱい。