バスをおりる頃には、雨は止んでいた。
 濡れたアスファルトを水たまりを避けて歩く。

 久しぶりに会えて、麻衣はうれしそうだった。
 私はちゃんと話ができたのだろうか。
 余計な心配をかけていないといいけれど……。

 空翔には悪いことを言ったと思う。
 心配してくれているからこそ、ああやって話しかけてくれたのに、冷たい態度を取ってしまった。

 後悔は、いつもあとから私のうしろをついてくる。
 こうすればよかった、ああ言えばよかった、が罪悪感になり、私を部屋に閉じこめるんだ。

「ああ……」

 まだ胸が痛い。
 感覚的なものじゃなく、本当にしくしく痛む。

 久しぶりに星弥の名前を人から言われたからだ。
 あの頃は、聞くだけで幸せになれた名前も、今では悲しみ色に包まれてしまう。

 星弥のいる世界に行きたい。

 それが無理なら、星弥のいない世界へ。