キッチンへ行くと、今朝もリビングのテレビがにぎやかに騒いでいた。
 女性アナウンサーの明るい声が耳にざらつき、思わずため息がこぼれる。

 私に気づいたお母さんがリモコンでボリュームを下げ、ソファから立ちあがった。

「おはよう。よく眠れた?」

 ドラマの台詞のように、毎朝同じことを尋ねる母。
 口元に笑みを浮かべてそばまでくる。次はあの質問だろう。

「今日は、学校に行けそう?」

 キッチンカウンターに置かれた弁当箱は、粗熱を取るためにフタが半分だけかぶさっている。
 横目で見ながらグラスにミルクを注ぐ。

 制服に着替えたとしても、行く気になれない朝もある。
 先週は半分も学校に行けていない。月曜日の今日は珍しく早く目が覚めたので、とりあえず向かうつもりだ。

「うん。今日は行くつもり」

 笑みを意識し、明るく答えるとお母さんはぱちんと両手を合わせた。

「月穂の好きな甘いたまご焼き作ろっか?」
「あー、いらない」
「朝はちゃんと食べないとパワー出ないわよ。私なんて食パン二枚も食べちゃったんだから」

 テレビよりも明るく大きな声ではしゃぐお母さん