「私も、星弥に会えたの」
「え?」

 びっくりして顔を離すと、おばさんはクスクス笑った。

「夢での話よ。不思議な夢だった」

 そう言うと、おばさんは星空を見るように天井に目をやった。

「誰もいない山の頂上に私はいてね、たくさんの星がふってくるの。気づくと星弥がそばにいて、『最後に信じてくれてありがとう』って笑うのよ」

 ああ、涙があふれてくる。
 おばさんの瞳にも涙が光っている。

「あの子ね、ヘンなこと言うの。『これからは月になるんだー』って、ほんと子供のままなんだから」
「きっと、本当に奇跡が起きたんですよ」

 そう言った私に、おばさんはしっかりとうなずいてくれた。

「いろいろありがとう。月穂ちゃんのおかげよ」
「私こそ、ありがとうございました」

 ふたりで一階へおりると、泣いている私たちを見て、麻衣と空翔は慌てていた。

 大丈夫だよ。悲しい涙じゃなく、うれしい涙だから。

 外に出ると、雲一つない空に月が浮かんでいた。
 楕円形でこれから満ちていく宵月が町を照らしている。

 月光をたよりに、私も帰ろう。

 星弥が笑っているみたい。
 笑みを星弥に返し、永い後悔も一緒に還した。
 
 ――帰ろう、返ろう、還ろう。


 明日の世界は、今日よりもきっと満ちているから。





【完】