「夢、すごかったな」

 星弥はやさしい瞳をしている。
 まだ降る流星群の光が、星弥の体を包み込んでいるように見えた。

「本当だね」
「出会いから最後の日まで、まるで俺たちのダイジェストみたいだった」
「うん」
「てるてるぼうずも完成できたし、ほんとすごいよ」

 ニッと笑う星弥に、私もほほ笑んでいた。

「星弥のてるてるぼうずはかなり不格好だったけどね」
「ああいうの苦手なんだよ」
「私も苦手。だけど、みんなが手伝ってくれたんだよ」

 ひとりきりだと思っていた。だけど、そうじゃなかった。

「月穂の月は、今夜は上弦の月か」

 星弥があごをあげて言ったあと、照れたように笑った。

「俺もずいぶん月について勉強したんだ」
「そうなんだ。私も星には詳しくなったよ」

 さっきまでは姿を隠していた星座がちらほらと光り出している。
 流れる星の光が弱まっている。
 空全体がどんどん遠くなっていくように思えた。

「そろそろ流星群が終わるよ」

 当たり前のように言う星弥に、一気に悲しみが込みあげてくる。
 泣いちゃいけないのに。
 最後は笑いたいのに……ダメだった。
 いきなり強くなんてなれないよ。
 そばにいたいよ……。

「おいで」

 両手を広げた星弥の胸に飛び込んだ。
 わかっている。
 もうすぐ星弥は流星群と一緒に行ってしまうんだ。

 だったら私は最後に、最後に……。
 星弥の胸に手を当て、そっと体を離した。
 その顔をまぶたの裏に焼きつける。強く、強く。
 思ったことを言葉にするのに勇気なんていらないんだ。

「私ね、星弥に伝えたいことがあるの」
「うん」

 うなずく星弥の姿がどんどん夜に溶けていく。

「星弥のことずっと忘れたいって思ってた。こんなにつらいなら忘れてしまいたい、って。でもムリだった」