「星弥。星弥!」

 泣き叫ぶ私の髪を星弥はなでてくれた。
 震えるほどの感動が体中を包んでいる。

「泣いちゃダメだよ。せっかく一緒に流星群を見られたんだから。最後は笑顔にならなくちゃ」

 そう言うと、星弥は私の両肩に手を置き距離を取った。

「ムリだよ。やっぱり星弥がいないと、私……」

 こんなにそばにいるのに、もう会えないの?
 本当にこれで最後なの?

「あーあ」

 急に星弥がすねた顔をした。

「せっかくのラストシーンなのに、これじゃあ流星群に怒られちゃう」
「星弥……」

 流星群が私たちを囲むようにふり注いでいる。

「月穂にはたくさんの人がいてくれる。ひとりじゃない。月穂が心を開けば、ちゃんと受け止めてくれるんだよ」
「……でも」

 言いかけた私に、星弥は首を横に振った。

「奇跡は俺が生き返ることじゃない。月穂が俺のいない毎日を生きていくことだよ。うまく歩けなくてもいい。でも、立ち止まるのは終わりにしよう」

 そう言ってから星弥はまた空を見あげた。
 まばゆい光の向こうで、月を隠していた雲が途切れようとしているのがわかる。
 本当は星弥にすがっていたい。
 だけど、だけど……私には伝えたいことがある。

「星弥、あなたが好き。初めて話をした日から好きだった」

 ずっと言えずにいた。
 いつか会えたらちゃんと言おうと思っていた。

「それが聞けて本当に幸せ。月穂、全然言ってくれないだもん」
「だから……」
「だから前を向いて歩いて。つらくなったら空を見あげて。俺はさ、星じゃなく月になることにしたから。それなら月穂も見つけやすいだろ?」

 星弥が指さすほうに、わずかな月の輪郭が見え出していた。

「そんなふうに自分で決められるものなの?」
「こんな奇跡が起きるんだもん。言ったもん勝ちだよ」
「なにそれ」

 星弥の前で笑うのは久しぶりだった。

 そうだった……。
 こんなふうに私たちは、いつも楽しかったよね。