君のいない世界に、あの日の流星が降る


 ――無音の世界にいるみたい。

 頂上に人の姿はなく、敷いているシートがたまに風で震えるだけ。
 遠くに見えるまばらな町明かりが、星のように瞬いている。
 パーカーを羽織ってから横になると、視界いっぱいに空が映し出された。
 あまりにも広い空に、月と星と雲だけが存在している。
 まだ雲はその姿を誇示するようにゆっくり流れている。
 ひとつ、ふたつ、みっつ。
 半分に割れた月が控えめに光っているせいで、ライトを消すと少し先も見えないほど暗い。

 もうすぐ九時半。まだ流星群はその姿を現さない。
 たくさんの人が、同じ空を見あげているのだろう。
 目を閉じると、六月からのことが思い出される。
 梅雨の空、不思議な夢、みんなのこと。
 死んだように生きる私を、いろんなことや人が支えてくれた。

「全部、星弥が教えてくれたんだね」

 流星群が見えたら、伝言を伝えるよ。
 私はもう大丈夫。
 まだくじけることがあったとしても、きっと歩いて行ける。
 今日よりも少しだけ前向きに、一歩ずつでも前に進むよ。
 あの日、星弥がやっていたように空に手を伸ばしてみる。
 届きそうで届かない星をつかんでみた。

 星弥はどの星になったのだろう。

 今、私が見えてるのかな。見えているといいな。
 七月の空にはたくさんの星座が広がっている。
 雲が邪魔して見えない星座も、彼の書いた黒板のイラストを思い浮かべればどこにどの星があるのかわかる。
 東の空には天の川が流れていて、こぎつね座を守るように夏の大三角形が見える。
 北には北極星が作るこぐま座が輝いている。
 ひとつひとつ、確認していく。
 上弦の月、私の星座であるおひつじ座を重ねると、月読みは……。

「新しい旅立ち、かな」

 言葉にすれば、わずかに胸が痛む。
 それでいい、この痛みを忘れずに生きていけばいいのだから。

 ふいに星が強く輝き出した。
 大きな雲が、月を隠したせいで星座がくっきりと姿を現している。
 宝石のように光る星たち。

 星弥が教えてくれた通りだ。
 このあたりだけは月が隠れて、大流星群が見える、って――。
 
 なにかが視界を横切った気がして体を起こした。