「なあ、月穂」
「ん?」

 ふり向くと、空翔が翳りゆく世界のなかで困った表情を浮かべている。

「流星群の奇跡、ってなんだと思う?」
「あ……星弥からなにか聞いてたの?」

 尋ねてすぐに、前に駐輪場で自分が口にしたことを思い出した。
 道を隠すように背にしてから空を見た。
 流れる雲の向こうでは、宇宙と同じ色の紺色が広がっている。

「奇跡はもう終わったと思う。不思議なことがあってね……。そこで星弥と会えたし、別れもちゃんと言えたから」
「あのカーテン越しのやつだろ?」

 一瞬返答に遅れた。
 なんで空翔が知ってるのだろう。
 ああ、そっか。
 やり直した過去が今につながっているんだ。
 あの日、空翔も一緒に星弥に会ったんだ。

「亡くなる瞬間には立ち会えなかったけれど、ちゃんと会えた。それが奇跡だったと思う。今からは流星群にお礼を言うつもり」
「そっか……」

 そう言ったあと、空翔は首を横に振った。

「月穂は強くなったんだな。俺なんて、全然ダメダメだ」
「なに言ってるの。麻衣を誘ってくれたでしょう? すごくうれしいよ」

 あんな幸せそうな麻衣は初めて見た。
 想いが伝わってよかったね、と言ってあげたい。

「そうじゃない。俺は、奇跡を……いや、あの夢を活かせなかったから」

 風が草木を音もなく揺らす。
 今、なんて言ったの……?

「一緒に夢、見てただろ? 俺なりに月穂が別れを告げられるようにフォローしたつもりなんだけどな」

 軽い口調で言う空翔。思考が追いつかない。

「空翔も同じ夢を見てたの? え、ウソでしょう?」

 夢のなかで空翔に何度か会った。
 彼の対応が過去と違うことはあった。
 ここまで車で迎えにきたことは、私の行動が変わったからなのかと思っていたけれど違ったの?

「親友からのお願いだったからさ」
「……星弥からの?」