最後の一個を窓枠にくくりつけると、窓はてるてるぼうずのカーテンみたいになった。

「壮観だなこりゃ」

 両腕を組んで感慨深げにつぶやいた空翔の横でうなずく。
 最初はひとつずつ窓枠に飾っていたけれど横幅が足りずに、苦肉の策で縦にもつないだ。

 みんなにお礼を言ったあと、数人だけが教室に残った。

「これだけ飾ったんだからきっと晴れるよね」

 麻衣がてるてるぼうずの隙間から空を確認した。
 雨は止んだものの、上空には灰色の雲が途切れなく続いている。
「そういえばさ」と空翔が前を向いたまま空翔が言った。

「松本の兄ちゃんが、あの松本OBだって知って驚いたよ。星弥にも教えてあげたかったなあ」
「そんなに怖かったの?」
 と尋ねた松本さんに、空翔は身震いをしている。

「怒鳴るとかじゃなくて、冷静に叱るんだよ。それがマジで怖かった。そういうところ、松本と似てるのかもな」
「誉め言葉として受け取っておくね」

 クスクス笑う松本さんに、空翔も笑っている。
 深川さんが「これ」と、私が選んだてるてるぼうずを渡してくれた。
 自分で作ったもののなかで、いちばん星弥に似ているてるてるぼうず。

「ありがとう。あの、本当にありがとう」
「いいって。あたしも……ごめん」

 私は、みんなとの間にガードを張ってきた。
 いくつものガードを設置することで自分を守ろうとしてきたんだ。
 もう、そんなことはしない。
 たとえ、奇跡が起きなくても私は私らしく生きていきたい。

 てるてるぼうずをリュックのサイドにくくりつけた。

「そろそろ行ったほうがいいかも」

 麻衣の声に壁時計を見ると、午後五時半を示している。
 家に帰る時間はもうないから、このまま向かうしかない。

「これ、よかったら使って」

 麻衣が大きめのエコバッグを渡してきた。
 なかには、レインコートと前開きの白いパーカーに長めの靴下、懐中電灯とランタン。
 それにペットボトルのお茶とお菓子が入っている。