テストが終わると同時にクラスはわっとにぎわう。
 結果がどうであれ、二週間もすれば夏休みは来るし、なによりもテストから解放されたよろこびでテンションがあがってしまう。
 はしゃぎながら帰っていくクラスメイトを横目で見ながら、荷物をまとめる。
 これから家に戻り、時間ギリギリまでてるてるぼうずを作らなくてはならない。

 あの日、夢から醒めると部屋の片隅に星弥がくれたてるてるぼうずが入った紙袋があった。
 ぎゅうぎゅうに押し込められていたてるてるぼうずは、私の作ったものよりも不格好で、星弥らしいなと思った。
 目標の数にはまだまだ遠い。
 なんとかがんばらなくちゃ……。

 ふと、教室から音が消えた気がした。
 見渡すと、何人かのクラスメイトが自分の机でじっとしている。
 普段なら放課後は壁際に集まるはずの深川さんたちも、会話を交わすことなくうつむいている。

 ……どうしたんだろう? 

 不思議に思いつつも、残りの荷物をリュックのなかに放り込んだ。
 椅子を引く私に、「待って」と言って深川さんが歩いてくる。
 どこか焦ったような早足は、彼女らしくない。

「まだ、このあとあるから」
「……え? このあと?」
「もう少しだけ待ってて」

 通せんぼするかのごとく立ちはだかる深川さんに、
「あ、うん」
 ヘラッと笑って答える私がいる。

 違う、私はもう変わるのだから。
 気持ちは言葉にしないと伝わらない。
 グッと気合いを入れて深川さんを見る。

「今日は大事な用事があるから帰る。ごめん、どいてくれる?」
「どかない」
「なんでそんなこと――」

 言いかけて気づく。
 残っているクラスメイトが私を見つめている。

「え、なに……?」