カーテンがレールを滑る音がしたと思ったら、私は星弥に抱きしめられていた。
 強く抱きしめられ、息ができない。
 それでも必死に抱きしめ返す。

「目を閉じたまま聞いて」

 何度もうなずく私の頭を、星弥の右手が包んでくれた。

「てるてるぼうず、間に合わないよね?」
「……ごめん」
「いいよ。俺もあんまり作れなかったから。紙袋に入れてるから持って帰って」
「うん」

 入院中も作ってくれてたんだ……。
 泣いちゃいけないのに、勝手に涙があふれてくる。

「言わなくちゃいけないことがあるんだ」

 今にも夢が終わりそうで、必死で星弥にしがみつく。

「流星群は奇跡を運んでくれる。でも……それはこの夢の話じゃないんだ」

 思わず目を開けそうになった。

「え、夢……?」

 信じられない。どうして星弥が夢の話を知っているの?

「流星群に願ったんだ。夢でいいからもう一度月穂に会いたい、って。月穂にも同じ夢を見てほしいって」
「じゃ、じゃあ……この夢を星弥も見ているってこと?」

 混乱する私に星弥は「ああ」と答えた。

「最初は映画みたいに見ていることしかできなかった。でも、月穂が違う行動をしてくれた頃から、やっと自分の意志で動けるようになったんだ。必死で俺に『病院へ行け』って何度も言ってくれたよな?」
「星弥……」

 目を閉じていても涙はあとからあとから頬を伝っていく。
 星弥の行動が違ったのも、そういう理由だったんだ。

「でも、俺の病気は春には深刻な状態になっていた。夢のなかでいくら駆けまわっても結果は同じだってわかっていた。夢の世界でどんなにがんばっても、俺の命は助からなかったんだよ」
「じゃあどうして……。どうしてこの夢を見ているの? この夢にどんな……」

 おばさんの言っていたことが頭に浮かぶ。
 もう一度さよならをするための再会なんて、そんなのひどいよ。
 ギュッと体をさらに抱きしめられた。