君のいない世界に、あの日の流星が降る

「星弥、つらかったら横になっててね。勝手にふたりで話しかけるから」
「大丈夫。さっき目が覚めたところでさ、今日は体調、いいんだ」
「うん」
「でも、久しぶりに声が聞けてうれしいな」

 少しでも星弥を感じたくて、そっとカーテンに右手を当ててみた。

「今日は学校あるんじゃなかった?」

 星弥の質問に「へへ」と答える。

「今日はふたりで遅刻していくつもり」
「はは。なんか、悪いね」

 普通に会話ができてうれしい反面、これじゃあ前の病院のときの会話と同じだとも感じる。
 肝心な話を避けるようにぐるぐる回っている。

「ねえ、星弥――」
「あれ、空翔の声が聞こえないけど?」

 横を見ると、空翔はもう泣いていた。
 大粒の涙をボロボロこぼしながら、
「あくびしてた。てか、お前さぁ、『会いに来るな』ってひどくね?」
 強がる口調で涙がバレないようにしている。
 鼻を真っ赤にする空翔を見ていると、私まで泣きそうになる。

「ごめんごめん」

 星弥が明るく答えた。

「俺たち、めっちゃ心配してんだからな」

 腕で涙を拭ったあと、空翔はなにか言おうとして口を閉じた。
 どうしても涙が止まらないようで、歯を食いしばっている。
 どんな言葉をかければいいか考えるほど、なにも浮かんでこない。
 そうだよね、ふたりは親友だもんね。

 ふいに星弥が「聞いて」と声にした。

「空翔、俺さ……怖かったんだ」

 ハッと顔をあげた空翔。
 私も思わずカーテンから手を離してしまった。

「死ぬのが怖い。自分の命が尽きるなんて、想像もしてなかったからさ」

 ひどく落ち着いた声が耳に届き、くだけ、消えていく。

「月穂に謝らなくちゃいけないことがあるんだ。去年、体調のこと心配してくれたよね? 実は、もうその時には病気のことわかってたんだ」
「え……」
「最初は春のことだった。二年生になる直前。具合が悪くって消化器内科に行ったんだよ。そしたら先生が驚くくらい数値が悪くってさ……」

 花火が弾けたみたいに目の前が光った。
 一秒後には真っ暗になる世界。