君のいない世界に、あの日の流星が降る

「流星群が消えたら、ちゃんと話するね」
「うん」

 うなずく麻衣のうしろに誰かが立っていた。
「あ……」

 深川さんだった。
 麻衣も気づいたのだろう、ふり向いたまま固まる。
 離れたところに立っている女子ふたりが興味深そうにこっちを観察している。

 深川さんは前髪を触りながら、
「なんで泣いてるの?」
 と尋ねた。
 心配しているようにも、茶化しているようにも思えた。

「なんでもないよ」
「なんでもないわけないじゃん」

 麻衣の肩に手を置いた深川さんが、「ね」と耳に顔を寄せた。

「なにかひどいこと言われたの?」
「ちがっ……」

 否定する麻衣から私へ、深川さんはゆっくり視線を移す。

「だったらいいけど、なんかあったら言ってよ。それより、これからテスト対策しない?」

 いいよね、とでも言うように私をじっと見つめてくる。

「だって白山さんは七夕までは学校に来られないみたいだし。あ、テストは受けてるけどね」
「あの……リナちゃん。大丈夫なの。あたし、大丈夫だから」

 麻衣の言葉に深川さんは立ちあがると、「そう」とだけ言って戻っていく。
 最後まで私をじっとにらむように見ていた。

「あの、麻衣。私、帰るね」
「え、でも……」
「やっぱり家でてるてるぼうず作るよ。深川さんと勉強して、明日私にもこっそり教えて」

 戸惑った顔の麻衣に「大丈夫だから、ね?」と笑みを浮かべると、渋々ながらうなずいてくれた。

 リュックを背負い、足早に教室を出た。
 階段を駆け下りようとしたとき、
「待って」
 声が聞こえた。松本さんの声だ。
 階段の上に立つ松本さんが、困った顔を貼りつけて一段ずつおりてくる。