「私、別れないから」
涙を拭い、はっきりと伝えた。
「そんな簡単に星弥を好きになったわけじゃないから」
「気持ちはわかるよ。でも、俺は推薦で合格したけれど月穂はまだ受験生だし。それに、やっぱり俺たち、違う高校に行ったほうがいいと思うんだよ」
「私のことがきらいになったの?」
「きらいだよ」
視点を掛け布団に合わせたまま星弥はウソを口にした。
「……本当に?」
一瞬顔をあげた星弥が、気弱にまた目を伏せる。
点滴台がぐにゃりとゆがむのを見て、夢が終わろうとしているのがわかる。
でも、このまま終わらせたくない。
きっとまだ手はあるはず。
「私は別れない。どんなことがあってもそばにいる」
「ストーカーじゃん、それ」
「そう思われてもかまわない。だって、この夢に意味はあるから」
周りがどんどん暗くなっていく。
「夢?」
きょとんとする星弥がやっと私に顔を向けてくれた。
少しやせたけれど、ほかにはなにも変わっていないように見えた。
なのに、病気は彼の体をむしばんでいる。
前みたいに、ただ泣いているだけの私は、もう終わり。
「これは夢の世界なの。もう一度星弥を助けるために、流星群がくれた奇跡なんだよ。星弥を助けたい! そのためならなんだってやるんだから!」
黒色に塗りつぶされていくなか、必死に叫んだ。
あふれそうになる涙をぐっとこらえて。
ああ、神様。
もう一度七月に戻してください。
今度こそ、星弥の病気を早く治せるようがんばるから。
だから、もう一度七月に!
ギュッと目を閉じて祈ると、周りの空気が変わるのがわかった。
ざわめきが少しずつ近づいてくる。
そっと目を開くと、病院の一階にある自動販売機の前に立っていた。
取り出し口には星弥の好きなコーヒーがあった。
まだ、夢のなかにいるんだよね?
今は……何日なのだろう?
星弥がはじめて病院に来た日に戻れたなら……。
自動販売機の隣にある三人がけのソファに腰をおろす。
缶コーヒーをギュッと握ると、あたたかさが肌に伝わってくる。
首に巻いているマフラー。
目の前を歩くお見舞いと思われる親子連れは、コートを手にしている。
夏じゃない……。
涙を拭い、はっきりと伝えた。
「そんな簡単に星弥を好きになったわけじゃないから」
「気持ちはわかるよ。でも、俺は推薦で合格したけれど月穂はまだ受験生だし。それに、やっぱり俺たち、違う高校に行ったほうがいいと思うんだよ」
「私のことがきらいになったの?」
「きらいだよ」
視点を掛け布団に合わせたまま星弥はウソを口にした。
「……本当に?」
一瞬顔をあげた星弥が、気弱にまた目を伏せる。
点滴台がぐにゃりとゆがむのを見て、夢が終わろうとしているのがわかる。
でも、このまま終わらせたくない。
きっとまだ手はあるはず。
「私は別れない。どんなことがあってもそばにいる」
「ストーカーじゃん、それ」
「そう思われてもかまわない。だって、この夢に意味はあるから」
周りがどんどん暗くなっていく。
「夢?」
きょとんとする星弥がやっと私に顔を向けてくれた。
少しやせたけれど、ほかにはなにも変わっていないように見えた。
なのに、病気は彼の体をむしばんでいる。
前みたいに、ただ泣いているだけの私は、もう終わり。
「これは夢の世界なの。もう一度星弥を助けるために、流星群がくれた奇跡なんだよ。星弥を助けたい! そのためならなんだってやるんだから!」
黒色に塗りつぶされていくなか、必死に叫んだ。
あふれそうになる涙をぐっとこらえて。
ああ、神様。
もう一度七月に戻してください。
今度こそ、星弥の病気を早く治せるようがんばるから。
だから、もう一度七月に!
ギュッと目を閉じて祈ると、周りの空気が変わるのがわかった。
ざわめきが少しずつ近づいてくる。
そっと目を開くと、病院の一階にある自動販売機の前に立っていた。
取り出し口には星弥の好きなコーヒーがあった。
まだ、夢のなかにいるんだよね?
今は……何日なのだろう?
星弥がはじめて病院に来た日に戻れたなら……。
自動販売機の隣にある三人がけのソファに腰をおろす。
缶コーヒーをギュッと握ると、あたたかさが肌に伝わってくる。
首に巻いているマフラー。
目の前を歩くお見舞いと思われる親子連れは、コートを手にしている。
夏じゃない……。