ふいにスマホが震え、ラインの着信を知らせた。

 画面を開くと、母からのメッセージが届いている。
【学校から職場に連絡がありました。病院受診ということにしてるからね】
 すぐに画面を消し、ポケットにスマホをしまう。

 高校に行かなくなったことを、これまで叱られたことはない。
 毎朝、その日どうするかを尋ねられ、それに合わせてもらってばかり。
 夕飯の時は、テレビの話やパート先での話に終始し、学校の話はしない。
 父も同じだ。

 きっと、誰もが私に気を遣ってくれている。
 無理やり立ち直らせようとしない両親もまた、焦ることで台無しになることを怯えているのだろうか。
 これまで考えないようにしていたのに、両親の思いをひしひしと感じる。
 わかっている。
 私がしっかりしないと、周りに迷惑をかけてしまうって。
 でも今だけは、星弥のことだけを考えていたい。

 ノートを開き、前に読んだ箇所を確認していく。
 休憩を取ることもなく、読み進めていくと、徐々に宇宙について理解できるようになった。
 果てしなく広い宇宙。
 そのなかに浮かんでいる地球。
 解明されていない謎が多いから、人は宙にあこがれ続けるのだろう。

 星弥の好きな世界が少しだけわかった気がしてうれしい。
 『流星群とは』のページも、すんなり頭に入っていく。

『彗星が放つチリの粒がまとめて待機に飛び込んでくるんだ。チリが大気にぶつかると高温になって、光を放ちながら気化する。その光の束を流星群って呼ぶんだよ』

 耳元で星弥の声が聞こえるよ。
 こんな難しい文章を、私にわかるようにかみくだいて説明してくれたんだね。
 本の後半は、宇宙の仕組みや、世界の有名な天文台についての説明が続いた。
 最後のページをめくると、右側に引用先が羅列してあり、左のページには出版社名や発行日などが印刷されている。
 やはり『流星群の奇跡』について触れられた箇所はなかった。
 もう夕方だし、今日はここまでにしよう。
 本を閉じようとしてふと、『奇跡』という単語をどこかのページで見た気がした。
 引用先が記載してあるところに、その文字はない。さらにページを戻すと、そこには『筆者あとがき』というページがあった。

 あれ、こんなページさっきはあったっけ……?

 ほかのページより少し大きめ文字で書かれている文章を目で追った。