人と深くかかわらないことに決めたのは、失った恋を思い出したくないから。
 失恋がきっかけで性格まで変わってしまったなんて、誰にも言えない秘密だ。

「そうだったそうだった。『月読み』って言ってたよね。あれ? 『星占い』とどう違うんだっけ?」

 首をかしげる麻衣に怪しまれないように自然に立ちあがる。

「『星占い』は、星座から占う方法。『月読み』は月の満ち欠けを参考にして、自分の星座との位置関係を見ることで未来を読み解く方法。ま、オリジナルだけどね」

 リュックを背負うと、さっきよりも重く感じる。

「オリジナル? 月穂が作った占いだっけ?」
「一応参考にしている『星読み』ってのはあるんだけどね。どうやって作ったかは、もう忘れちゃった」

 歩き出す隣に麻衣が並ぶ。
 遠くにあった雲がさっきよりも空を侵食している。

「ね、また占い……じゃないや、『月読み』またやってよ」
「それがさ、やりかたも忘れちゃったんだよね」
「えー。結構当たってたと思うよ」