「私、わけのわからないことばっかりしてるよね。クラスのみんなもそう思ってるはず。でも、麻衣だけにはちゃんと話をするから、それまで待っててくれる?」
「……話、してくれるの?」

 きょとんとする麻衣の目をじっと見つめてうなずく。
 大切な友達にきちんと話をしたい。でも、まだ次期早々だ。

「約束する。七夕が終わるまで待っててほしい」

 麻衣にだけはすべて知ってもらいたい。
 思うそばから言葉になっていくようだ。

「やった!」

 目の前の麻衣が、急に笑顔になったのを見て驚いてしまう。

「……どうしたの?」
「だってさ、月穂って全然自分のことしゃべらないじゃん。だから、予告編だけですごくうれしくなっちゃった」

 本当の気持ちを隠していること、麻衣にはお見通しだったんだな……。

「ちゃんと話すよ」
「約束だからね」

 そろそろ登校する生徒が少なくなってきた。
 もうすぐ、チャイムが鳴るのだろう。

「ほら、行って。あと、今日からお昼は、深川さんたちと食べてくれる?」
「え、そんなの……」
「大丈夫。私が登校した日は、強引にグループに加わるから」

 ね、と首をかしげると、麻衣は素直にうなずいた。
 坂道をのぼりながら麻衣は手を振る。
 何度も何度も。

 麻衣なら、私の過去を知っても否定はしない。
 そんなこと、とうの前からわかっていたはずなのに、言えなかったのは私の弱さだ。
 ばいばい、またね。

 どうか話をする時に、星弥が隣にいますように。