「月穂ちゃんは大丈夫なの? 星弥の運命を変えられなかったとしても、それでも奇跡を信じるの?」

 私は……どうなのだろう?
 努力しても星弥の運命を変えられなかったなら……。
 もう一度星弥の死を看取るなら……。
 答えは『きっと一緒に死を選ぶ』だ。

 そんなこと言えるはずもなく、「はい」と答えた。

「星弥の病気は秋に発覚したはずです。それがこんなに早まったんですよ。これが流星群のくれた奇跡なら、私は信じます」

 しばらく黙ってから、おばさんは小さくうなずいた。

「そうよね。たしかに秋に病院にかかったのが最初だものね」
「このあと目が覚めたら、家に星弥がいるってことだってありえます」

 運命が変わっているなら、星弥が亡くなったという事実が消えるかもしれない。
 私たちが星弥に会えるかもしれない。

「私、精いっぱいやりたいんです。朝起きて、なにも変わってなくても、次の夢でなにか進展があるかもしれない。そう思いたいんです」
「……わかったわ。私も信じてみる」

 うなずくおばさんの向こう。キッチンの壁がぐにゃりと曲がった。
 夢の終わりが来たんだ。

 どうか、朝起きたら星弥が生き返っていますように。
 それが無理なら、次の夢をすぐに見たい。
 ううん、見る。
 
 流星群がこの町に来る前に、奇跡を起こしてみせるんだ。