同じダンス部の同級生に片想いをしているとのこと。
 忘れていたけれどこんなことあったな……。
 この日になにかあったんだっけ?
 いくら考えても思い出せないまま、私はバッグからノートを取り出した。

「白山先輩お願いします。独学で占いをやってるって聞いて、どうしても占ってほしかったんです」

 キラキラした目で見てくる片倉さんに「んー」と答えてから私はノートをめくる。

「独学っていうか、勝手に作っただけなんだよね。当たらないかもよ」
「ウソウソ」と、希実が大声で否定する。
「ほづっちの占いはめっちゃ当たるって有名なんだよ。星好きなカレシがいてさー」
「希実、余計なこと言わないで」

 さらりと忠告しながらも私は笑っている。
 こんなことしているヒマはないのに、全然体が言うことを聞いてくれない。

「えっと、片倉さんはおひつじ座だね。私と一緒だ。好きな相手の生年月日はわかる?」
「たしか、おうし座だったと思います。なんとなく似てる星座だったから。誕生日は聞く勇気がなくって……」

 自信なさげに答える片倉さんに、満月カレンダーのページを開いてみせた。

「今日が七月二十二日でしょう?」

 知りたかった日付が自分の口から発せられた。
 ああ、そうか。こんな昼間なのに帰り支度してたってことは、今日は終業式なんだ。
 どうりで放課後にしては教室のなかが明るいわけだ。

 最後の夢から二週間以上経っていることに気づき焦ってしまう。

「明日が満月なんだけど、行動を起こすなら後半のほうがおすすめだね。好きな相手がおうし座だったとして、月との位置関係から見ると、いちばんいい日は三十一日だね」
「はい」

 おうし座のページには、星弥の書いたアドバイスが彼の字で追加されている。
 何年かぶりに見る私たちのノートは、ふたりの思い出。
 それまで月のことしか興味がなかった私に、夜空に散らばる星座の位置をわかりやすく説明してくれ、ふたりで占いを考えた。

 今の私が『月読み』ができないのは、星弥を思い出にできずにいるからなんだ……。
 泣きたいのに、過去の私は「でね」と片倉さんの顔を覗き込む。

「告白にはまだ早いみたいだから、まずはさりげなく距離を詰めるのがいいと思う。たとえば、いつもより多めに話をするとか、笑顔を意識するとか、そういうことが効果的って出てるよ」