小宮山はそう言うけれど、オレにはそんなふうには思えなかった。
だってどーせ2年後には就職するんだから、今でも2年後でもたいした違いはない。

「時期がちょっと早まるだけだろ?」
「慌てて職探したってロクなことないよ。加瀬くんの人生がパーになる!」
「大丈夫だって。マトモなとこちゃんと探すから・・」
「絶っっ対にダメ!」

話は完全に平行線。
オレも小宮山も互いに譲らないまま時間だけがすぎてゆく。
さすがに疲れてきて、オレらはキッチンの床に並んで座り込んでいた。

ガスコンロの下の収納扉にもたれてボーっとしてた小宮山がふいに口を開いた。
「ねえ、なんでいきなりこんなこと言い出したの?」って。
「オレさあ、コイツの顔見てみたいんだ」
そう言って小宮山のおなかに視線を落とすと、それにつられて体育座りしてる彼女も自分のおなかをじっとみつめた。
そこにはまだ豆みたいにちっちゃなオレらの子供がいる。

「別にオレ、なにがなんでもB大卒業したいとか思わねんだよ。何かトクベツ夢があるわけでもねーし。卒業したらどっか就職して、そのうち小宮山と結婚して、フツーに暮らしてくつもりだった」

じーってオレの顔みつめてる小宮山に、今オレが考えてることを丸ごと話す。うまく伝わればいいなって思いながら。

「よーく考えてみろよ、同じだから。今から就職して、結婚して、子供できて、オマエと一緒に暮らすのと、4~5年先のオレの未来予想図と、どっこも違わねえだろ? オレの人生、なんも変わらねんだよ」
「・・そう・・なのかな・・」
「そーだよ。変わんねえよ。んでどうせ同じなら、オレは今がいい。今、結婚したい」
「ウ、ウン・・」

小宮山がグラつきはじめる。