綺麗な想いの花びらまで燃えてしまう。
苦しい。熱い。
それでも、好きという気持ちは消えてくれない。
自分で自分の想いに息苦しさを感じていた。
ショーケースを中途半端に開けては見たものの、結局宝石は手に入るわけでもなく、ただ眺める角度がほんの少しだけ増えただけだ。
それでももっといろんな角度から見たくて、手に入れたくて、私はもがく。
秋も深まるある日、私は前を一人で歩く安部君を見つけた。
これ以上、受験勉強中の安部君に迷惑をかけない方がいい。わかっている。
それなのにやっぱり自分の欲には勝てない。
私は小走りに安部君の後ろに並んだ。隣に並ぶことは出来なかった。
安部君は顔だけこちらに一度向けて。また前を向いた。何も言わずに。
これは拒絶なのだろうか。
わからない。
私は一度息を吐いた。そして口を開いた。
「安部君、久しぶり」
安部君はちょっとだけ頷いて、
「こんにちは」
と低い声でボソボソと返した。
返事があった。
私はどれだけ救われたか。
それなのに、私の口は止まらなかった。
「安部君は、〇〇大学を受けるんだよね? 学部ももう決めてるの?」
答えてくれるだろうか。私は不安になりながら続けた。
「理学部か医学部」
答えが短くだが返ってきた。
私は未だにどこの学部を受けるかさえも迷っていたので、やっぱり安部君は凄いなと思った。ちゃんと未来を見据えてるんだと。
そして何より応えてくれたことが嬉しかった。
「そっか。難しそうだね。……頑張ってね!」
思った以上にキャピキャピとした声が出て、自分で驚いた。そして、安部君はもっと驚いたようだった。
あ、固まった。
「……」
安部君は何か言った。けど、聞き取れない。
でも聞き返すことが私には出来なかった。安部君はするりと部室に入って行ってしまった。
やっぱり難しい。
***
受験勉強に集中できない。安部君への想いで学力が落ちるとか絶対嫌なのに。
安部君はもう明確な目標を持って進んでいる。
それは私の友人たちもだった。
私は未だに何のために勉強しているのかわからなかった。
家から近いからという理由だけで決めた志望校。
安部君の志望大学と比べると月とスッポンの差だが、地元の有名な大学だった。私の学力ではまだまだ足りないのも分かっていた。ぐだぐだ悩んでいる暇はない。勉強しなければ受からない。わかっている。
それでも勉強する気になかなかなれない。
毎日は待ってくれない。無情に過ぎていくだけだ。
県外志望校の安部君と離れ離れになる日も近づいてくるわけで。
私はますますやる気を失う。
そして、焦っていた。
みんなから取り残されているという焦り。
安部君と結局友達にさえなれていないという焦り。
自分がわからない。どうすればいいかもわからない。
何一つ思い通りにならない。
時だけが過ぎていく。
模試の判定はD判定。変わらないまま。
安部君とは挨拶もまともに交わせていない気がする。
もう、無理なのかな。
苦しい。熱い。
それでも、好きという気持ちは消えてくれない。
自分で自分の想いに息苦しさを感じていた。
ショーケースを中途半端に開けては見たものの、結局宝石は手に入るわけでもなく、ただ眺める角度がほんの少しだけ増えただけだ。
それでももっといろんな角度から見たくて、手に入れたくて、私はもがく。
秋も深まるある日、私は前を一人で歩く安部君を見つけた。
これ以上、受験勉強中の安部君に迷惑をかけない方がいい。わかっている。
それなのにやっぱり自分の欲には勝てない。
私は小走りに安部君の後ろに並んだ。隣に並ぶことは出来なかった。
安部君は顔だけこちらに一度向けて。また前を向いた。何も言わずに。
これは拒絶なのだろうか。
わからない。
私は一度息を吐いた。そして口を開いた。
「安部君、久しぶり」
安部君はちょっとだけ頷いて、
「こんにちは」
と低い声でボソボソと返した。
返事があった。
私はどれだけ救われたか。
それなのに、私の口は止まらなかった。
「安部君は、〇〇大学を受けるんだよね? 学部ももう決めてるの?」
答えてくれるだろうか。私は不安になりながら続けた。
「理学部か医学部」
答えが短くだが返ってきた。
私は未だにどこの学部を受けるかさえも迷っていたので、やっぱり安部君は凄いなと思った。ちゃんと未来を見据えてるんだと。
そして何より応えてくれたことが嬉しかった。
「そっか。難しそうだね。……頑張ってね!」
思った以上にキャピキャピとした声が出て、自分で驚いた。そして、安部君はもっと驚いたようだった。
あ、固まった。
「……」
安部君は何か言った。けど、聞き取れない。
でも聞き返すことが私には出来なかった。安部君はするりと部室に入って行ってしまった。
やっぱり難しい。
***
受験勉強に集中できない。安部君への想いで学力が落ちるとか絶対嫌なのに。
安部君はもう明確な目標を持って進んでいる。
それは私の友人たちもだった。
私は未だに何のために勉強しているのかわからなかった。
家から近いからという理由だけで決めた志望校。
安部君の志望大学と比べると月とスッポンの差だが、地元の有名な大学だった。私の学力ではまだまだ足りないのも分かっていた。ぐだぐだ悩んでいる暇はない。勉強しなければ受からない。わかっている。
それでも勉強する気になかなかなれない。
毎日は待ってくれない。無情に過ぎていくだけだ。
県外志望校の安部君と離れ離れになる日も近づいてくるわけで。
私はますますやる気を失う。
そして、焦っていた。
みんなから取り残されているという焦り。
安部君と結局友達にさえなれていないという焦り。
自分がわからない。どうすればいいかもわからない。
何一つ思い通りにならない。
時だけが過ぎていく。
模試の判定はD判定。変わらないまま。
安部君とは挨拶もまともに交わせていない気がする。
もう、無理なのかな。