私の仲の良かった友人たちは大学生になっており、一人浪人を選んだ私にちょこちょこ電話をしてきてくれていた。
 その気遣いがとても嬉しかった。その一方で、大学の話を聞くと、自分だけが取り残されているような気分になった。

 複雑な気持ちのまま五月、誕生日を迎えた。
 予備校仲間からプレゼントをもらい、嬉しくなって調子に乗った私は安部君にも電話をした。

 安部君は大型二輪の免許を取得していた。まだバイクを買っていないから予備校には自転車で行ってるとのことだった。バイトはバイクを買うためらしい。

 安部君は高校が本当に好きだったようで、懐かしい先生の話に私も楽しくなった。家族の話にもなり、弟さんとは三歳差で、とても仲がいいとのことだった。

「いいなあ」
「悪いと? 仲?」
「うちは、気があう時はいいけど、一歳違いだからか普段は私の方が年上なのにパシリにされてる」

 また電話するね、と言って電話を切る。

 安部君は電話中、三回欠伸をした。

 私は楽しかったけど、安倍君、退屈だったのかな。
 切ったあと、私は大きなため息をついた。楽しさは一瞬で、不安が残った。