「こうして手を伸ばせば触れられる。言葉だって交わすことができる。だから、一人で生きてるなんて思わないでよ」
私と千聖くんは住む世界が違うからと彼を一方的に遠ざけて、一方的に傷つけて。許されないことをしてしまったのに、千聖くんはそれを許してくれて。
「これからは、俺がそばにいる。美月は一人なんかじゃない。誰よりも美月の理解者だから、俺のこと信じて。絶対、守るから」
次々と彼の口からこぼれ落ちる言葉は、私の心をひどく揺らす。
「少しずつ俺と考えていこう、これからどうすればいいのか。一緒に、二人で」
──ざわざわして、落ち着かない。
──恥ずかしくて、どきどきする。
千聖くんの口から紡がれる言葉全てが温かくて、優しくて。
「……うん、ありがとう」
握られたままの手を、ぎゅっと握り返した私。
一人じゃない心強さ。
一人じゃない温かさ。
一人じゃない幸福感。
一人が二人になっただけで、それは二倍になって私の心を溶かしてゆく。
「ありがとう、千聖くん……っ」
私の瞳からは、また涙がこぼれた。
三限目の授業中、私と千聖くんは屋上で過去について話した。
私の過去は苦しくて重たくて苦いものだったのに、初めて人に打ち明けてみて思った。
もしかしたら悩みすぎだったのかもしれない、と──。