心を読み解かれるのが怖くなって、思わず俯くと、
「……私ね、ほんとは心配だったの」
頭に落ちて来た弱々しい声に、弾かれたように顔をあげる。
そこに映し出されたのは、眉尻を下げて力なく無理をして笑うような原さんの姿だった。
「バイトのときしか高野さんと話すことないけど、不意にみせる切ない表情が気になって。何かあったのかなって……でも、それを聞く勇気がなくて」
私を見て悲しそうに笑ったあと、
「何も知らないフリ気づかないフリ、見て見ぬフリするのは簡単なこと。他人なんて簡単に切り捨てられる世界なのも事実で」
いつも明るい原さんから現れる言葉とはかけ離れているようで、困惑して息を飲むと、
「でもね、このまま何もなかったように過ごすのは私には無理だなって思ったの。気づいちゃったら見て見ぬフリなんかできないよ」
胸を張ったように、明るい声が戻ってきて。
──「だからさ」と表情を緩めて、風に攫われる髪を耳にかけながら、
「高野さんが悩んでること私にも共有させてもらえないかな」
ぽつんっと心の真ん中に染み込んだ。
それから揺れ動く心の内側が、強く熱く発熱して。
無意識に、頷いてしまった。
***
それから移動してやって来たのは、見慣れないカフェ。初めて入ったおしゃれな店内に、私は居心地が悪くてそわそわする。
「高野さん、何か頼む?」
そんな私を落ち着かせるように原さんが声をかけて「あ、えっと……」言葉に詰まった私は、慌ててメニューへと目を落とす。
「ここね、パンケーキがすごく人気なんだけど……私のおすすめはストロベリーパンケーキだよ」
メニューの左下に指をさす原さん。
原さんがおすすめだと言ってくれたパンケーキはすごくおいしそうだった。でも、お腹が空いてなかった私は、ホットラテだけ頼むことにした。もちろん原さんは、おすすめだと言ったストロベリーパンケーキを注文する。
「無理やり連れてきてごめんね」
パンケーキを半分くらい食べ終えた途中で、しゃべり始める原さん。
私は、いえ、と答えて目線だけを外す。
「あのまま高野さんを一人に帰すわけにはいかないかなって思って、勝手に呼び止めちゃった」
屈託のない表情を浮かべて、べーっと舌を出した原さん。私と三つしか違わないのに、彼女には余裕と大人っぽさが垣間見える。