「だってまだ高校生だよ。十六歳。時間なんていくらでもあるんだから、自分が諦めない限りやりたいこと見つかるって」
──まだ高校生。
──もう高校生。
一体、どちらなんだろう。
「……諦めない限り?」
「うん、絶対」
「なんか信憑性ない気もするけど」
この世界に〝絶対〟なんてことはない。
それを肌で感じている。だから、その言葉だけはどうしても好きになれなくて。
それなのに。
「この世界に絶対があるってこと、俺が証明する。美月と一緒に」
私を見据えてはっきりと断言する。
「……え、なに、言って」
諦めなければ人はなんでもできる。
──私も、そう思っていた。
けれど、ある日それはバラバラと崩れて私に大きな傷を残した。
だから、信じるなんてできないけれど。
「なにって、美月が信じられるように諦めなければ人は何でもできるんだってことを証明するってこと。俺が絶対って言ったら絶対だよ。もちろん美月も一緒にね」
と、口元に弧を描いた。
同じ高校一年生の十六歳。
それなのに私なんかよりもうんと大人に見えてしまう。
どうして出会ったばかりの私のことを、そこまで気にかけてくれるのか分からなかったけれど。
それだけ彼も苦労をしてきてるということなのだろうか。私と同じくらい、それとも私よりも辛い過去があるのかもしれない。
心に寄り添うように優しい言葉をたくさんくれる彼のことを突き放すことはできなくて。
「……うん」
だから私は、小さく頷いたんだ──。