後から生まれる兄妹を私は守る立場にあったはずなのに、全然守ってあげることができなくて。

「……私、お姉ちゃん失格だね」

 ほんとにどうしようもない、情けない私。

「そんなことない……っ!」

 声を張り上げた理緒に驚いて顔をあげると、「そんなことない」何度もその言葉を繰り返して。

「お姉ちゃんは、私にとって……世界一のお姉ちゃんだよ……!」

 なんで、そこまで言ってくれるの。私は、たくさん理緒のこと傷つけたのに、どうして。

「私のお姉ちゃんのこと悪く言ったら…絶対に……絶対に許さないんだから……!!」

 止まっていたはずの涙は、また溢れ、目尻からたくさんの涙がこぼれ落ちる。それは、とめどなく次々と。

「……理緒、ほんとにごめんね」

 今までの分の謝罪を、言葉にできなかった分を。

「お姉ちゃん、さっきから謝ってばっかり……」

 すん、と鼻をすすって涙を拭う。

「だって、ほんとに悪いと思ってるから」

 どれだけ言っても足りなくて。どれだけ過去に後悔しても時は戻せない。

 それなら、前に進むしか道はなくて。

「ねえ、理緒……私のことを嫌いにならないでくれて、ほんとに、ありがとう」

 たくさんの〝ごめんね〟の代わりに、言えなかった分の〝ありがとう〟を。これから日々で紡いでいこう。

「ううん、私こそ……お守り、ありがとう。大事にするね」

 ぎゅっと握りしめたそれに、悲しみの涙が滲んで、少し色が濃くなっているようだった。

 けれど、きっとその涙は、糧になる。

 もうすぐある受験に、理緒は負けない。

 だって私なんかよりも、うんとうんと強いんだから。

 姉である私が、それを一番そばで知っている。昔から、ずっと──。