「自暴自棄になった俺は、部活だって行かなくなって、学校を休むことも増えた。それで日数が足りなくなって留年になったんだけど」
千聖くんが今まで抱えていたものは、とてもとても重たくて。
「俺はあの日、夢も希望も失った。生きることも嫌になった。なんのために生きてるんだろうって思うこともあった」
叫ぶような悲鳴に、私なんかとは比べ物にならないくらいほど苦しくて。
「夢を奪われるならいっそ死んでしまえたら……って考えたこともあった。そう思って屋上から飛び降りようと考えたこともあった」
いつも笑っていた千聖くんの口から、まさかそんな現実を告げられるなんて、想像もしていなかったから。あまりにも突然のそれに「えっ……」言葉を失った。
「楽になりたいって思ったんだよね」
千聖くんは私とは住む世界が違うと思っていたのに。
「だから息苦しい世界から逃げるために屋上に駆け上がったはずなのに、そこから見える景色を見て不思議と心が揺れたんだ」
目の前に視線を向けている千聖くん。
けれど、その瞳はどこか遠いところを写しているようで。
「…‥心が、揺れた?」
それはきっと、苦しかった過去の記憶。
「うん。俺さ、まだ死にたくないって、自分の人生諦めたくないって思うようになって。怪我してバスケできなくなってレギュラー外されたからって、なにも死ぬ必要ないだろって、そう思ってた自分がいたみたいで」
〝死にたい〟と思っていた彼の思いを、引き止めたのもまた〝彼自身〟。
「そう思ったら、少しずつ自分なりに現状を受け入れられるようになったんだよね。まぁ、その時点でかなり時間は経ってるんだけど」
そんな〝過去〟を隠したまま私のことを支えていてくれたなんて。
「えっと、あの……」
あまりにも衝撃的なものばかりで、気の利いた言葉をかけてあげることができない。
「今だからこそこうやって笑って話すことができるんだけどね」
その言葉は、私にも通じるものがあった。
「……うん」
「あの頃の俺や美月には、それが苦しくてたまらなかったのも事実」
「……うん、そうだね」
生きることを諦めて、死を選ぼうとした私たち。