桜の花が散る。

 桜は、散ってから始まるんだよ。って、とうさんが教えてくれてたっけ。

 あと、思い出した! 桜が咲くには厳しい寒さも必要なんだって。

 桜の木を見上げた。
 僕たちの事を、とても温かい眼差しで見守っていてくれている。

 花と葉は別々の道を歩んでいるようだけど実は同じ桜の木で、同じ方向を向いて歩んでいるんだ。


 ――咲良と僕は、これからは同じ道を歩いていく。

「綺麗な花を見に行きたい!」
「ね! 行こうか! 着いてきて!」

 僕も花に詳しくなった。
 綺麗だと思えるようになっていた。

 ふたりはカラスになり、柔らかな緑色を蹴り、地から離れると、どこまでも続く水色の広い空に向かって一緒に飛んだ。

 とうさんから聞いた、娘の事を全力で愛していた花ちゃんの話を、目的地に着いたら咲良に教えようかな! もう、知ってるのかな?

 僕は、横で気持ちよさそうに飛んでいる咲良を見つめた。僕も気持ちよかった。




 この一年間、僕はまるで桜色のような(?)恋をした。