「この子は、大翔に嫉妬して、嫌いなのかなぁ? って事は感じていたんだ。君が両親に放置されていた事は、君が教えてくれていたから、大人の僕がもっと寄り添えば、大翔の事を好きになってくれて、こんな事にはならなかったのかもね」

「花丸木さんは、何にも悪くないんだ。全部俺が……」

「よし! そろそろ、父さんって呼んで! 咲良も、大翔も、そして蓮もみんな僕の大切な子供!」

 ずっと嫌われるのが怖くて言えなかった事を花丸木さんは受け止めてくれて、花笑みのまま俺を抱きしめてくれた。

 あの事件の時は、大翔がいなくなって、沢山の大人達が動いて、周りの動きが予想を遥かに超えて、どうしようと思った。逃げ場がなくなったけど、花丸木さんにだけは話せた。嘘ついてしまったけれど。

 俺のせいで悲しそうな花丸木さんや咲良の為に、自分の事はどうでもいいから尽くして生きていくんだって、罪を背負って一生、生きていくんだって思っていた。

 大翔が一年前家に来た時、崖から落としてしまった彼なのかなとすぐに思い始めた。顔はカラスに似ていて、顔立ちがはっきりして、あの時と変わっていた。特に目が大きくなっていて。でも、大翔の気配がした。はっきりと本人だと分かったのは、花丸木さんが大翔と全く同じように接していたから。名前までそう呼んでいたし。俺達の事を大翔は覚えていない様子だったけれど。

 カラスだったって事も、大翔と花丸木さんが話している会話をこっそり聞いた。こっそりと言うか、普段その事を隠してるっぽかったのに、花丸木さん隠している事を忘れていたのか、聞こえる声で話していた。

 咲良をしょっちゅう愛しそうに見つめていたカラスの存在は知っていたから、すぐに「あのカラスか」と納得した。

 花丸木さんと咲良は彼と接する時、いつも幸せそうだった。その光景を見ていた俺も幸せだった。

 それと比例して、怖さも増していった。
 大翔が過去を思い出した時を想像して。

 大翔から過去を思い出した事と、人間でいられるのには期限があるって聞いた時は、罪悪感や後悔、そんな気持ちしかなかった。

 けれど、彼は思い出す前と変わらない態度で、むしろ、俺との時を以前よりも大切にしてくれている感じがして、毎日心の中で感謝の気持ちばかり言っていた。

 大翔が人間でいられて良かった。


「俺、自由に生きてって言われたけど、自由がよく分からないんだ。しばらく、父さんのカフェ手伝うわ! だから花いっぱいになった星を見られるチャンスが訪れたら、カフェの事や、咲良達の事は俺に任せて、花さんと一緒に見に行ってきて」