「いや、僕が話すよ。人間に変身させてくれた二人組の母親が僕の事心配してくれて、そこにいてね……」

 大翔は語り出した。

「あのね、咲良と半分こにしてもらったんだ」
「半分? 何を?」
「生きる時間と、カラスに変身する能力」
「ん?」
「まず、咲良と僕の人間として生きられる時間を足して、半分こにした。そして人間である咲良はカラスにも変身出来るようになり、カラスである僕は人間に変身出来るようになった。だから半分こなの」
「じゃあ、大翔はこれからは人間としてでも生きられて……。咲良は寿命が短くなったってこと? カラスにもなれちゃうの?」

「そう。大翔は人間として生きる時間がゼロって感じだから、私の寿命が半分になった感じかな。私ね、寿命が短くなった事に後悔はしてないの。むしろ、人間の大翔とこれからも一緒にいられるし、外に出られるようになったし……。ずっとね、この広い空を飛んでみたかったから」

「え、じゃあこのカラスは?」

「僕の姉さん!」

 カラスはこっちを見ながら、目をキランとさせた。

 広い空を飛ぶのか……。

「ずっと羽を動かし続けてこの広い空を飛び続けるのも、疲れてしまいそうだから、きちんと休んでね」

 一年前の俺なら、絶対にそんな言葉をふたりにかける事なんて、出来なかったと思う。

 変われる可能性はゼロじゃないのか。ふたりに教えて貰った。