しばらくたっても大翔と咲良は戻ってこなかった。咲良は落ち込んでいて、大翔はカラスになったんだな。

 昼、庭に置いてあるベンチに座っていると、大翔らしきカラスが姿を現した。

「あ、大翔……俺の事覚えてる? 元気? ご飯食べたかい?」

 俺は、彼の細かいところまでとても心配だった。

「カァー。カァー」

 元気に返事をしてくれたからきっと大丈夫かな。手に持っていたパンを小さくして彼にあげた。

 彼はもしゃもしゃ食べている。

「何か困った事あったら、いつでも頼ってくれよ」

 俺は時間さえあれば、ずっと彼の近くにいて、何か手助けをしたいと思っていた。今までは罪を償うためにって考えでそうしていたけれど、今は純粋な気持ちで。

「蓮!」

 後ろから聞き覚えのある声がした。

「あれ?」

 俺は立ち上がって、彼に近づいた。

「今、後ろでずっと見ていたよ。カラスと会話出来るんだね」

「え? どうして、人間なの?」

 俺は声が震えた。

 そこには桜の花びらを持った咲良と、人間の姿をした大翔が立っていた。

「理由を教えてあげるね」

 さっきまで俺の座っていたベンチに座りながら咲良は言った。