花火大会の日から時が過ぎ、雪の降る季節になった。まだふたりは帰ってこない。

 毎日考える。大翔は今何してるのかなって。笑っているのかな、困っている事はないかな? そして、私の事考えてくれているのかな?

 あの日、手を離した事を後悔している。
 無理やり握りしめておけば良かった。

 お父さんも大翔もいなくて、なんか物足りなくて、お父さんの代わりにカフェを開いている蓮の元に毎日来ていた。


 ちなみに彼らの旅行費は、お父さんの本が売れていて、心配ない。って蓮が教えてくれた。

「なんか、大翔って、亡くなってしまった彼に似てない?」

 私はホットミルクを持ってきてくれた蓮に言った。

 蓮に以前、亡くなってしまった彼を何故崖から落としたのか聞いた。すると、喧嘩をしていたら落としてしまったのだと答えていた。ひどく落ち込んだ表情をするから、その時はこれ以上聞いてはいけない気がしたのでやめておいた。今も、彼の話題を出すのは良くないと思っていたけれど、気がついたら、私は蓮に質問していた。

「初めて出会った時も思ったけれど、大翔の事を考えているだけで、彼の事を思い出すんだよねぇ。それに、あの私に宝物をくれたカラスもなんか似てる気配する……」

 カラスが以前持ってきてくれた角が丸くなっているエメラルドグリーンの小さなガラスの破片をポケットから出し、テーブルの上でいじった。私は小さな頃からピンク色のものが好きだけど、この色がとても気に入っていた。あのカラスが持ってきてくれたって理由もあるけれど。

 窓から差し込んできた光にそれを当てるとより綺麗に透けてキラキラしている。じっとそれを眺めた。

「えっ? だって全部同一人物じゃん」
「何言ってるの? 大丈夫?」
「まじだって!」
「えっ? まって! 本当に? 頭大丈夫?」

 カランコロン。

 その時、ドアが開いた。

「ただいま!」

 大翔が入って来た。しかもとても明るく。

「お、おかえり!」

 蓮も明るく答えていた。