「大翔が人間の姿に戻ってくれた時は、本当に驚いたよ。しかもあの桜の花ちゃんの前で」

 彼は桜の木の事も “花ちゃん ”と呼んでいた。
 大切にしている理由、分かった。

「あの瞬間は、花ちゃんが息子に魔法をかけてくれたのかと思ったよ。しかも一緒に暮らせる事が出来たし。ちなみに今家にある、大翔がぴったりな服も、花火大会の時に着た浴衣も、大きくなった姿の大翔を想像して花ちゃんと一緒に準備していたんだよ! 咲良の分もね! サイズピッタリでよかった」

 想像しただけで、心がじんわりしてきた。

「そういえば僕ね、カラスの時、花丸木さんが話しかけてくれた時、言葉が分かったんだ。人間語なのに。花丸木さんだったからかな」

「元人間だったからじゃない? 人間の時の記憶だと思うな。それより、とうさんって呼んで!」

「うん、とうさん」

 ご飯はいつも美味しいけれど、この日のご飯はいつもより美味しく感じて、普段はそんなに沢山食べれないのに、足りないと思う程だった。

 咲良は今、ご飯を美味しく食べれているだろうか。