気がつけば、僕は花丸木さんと旅行に来ていた。何故こんな事になっているのかというと。

 花火大会の日、ひとりになりたかった僕は咲良から離れ、人混みに入っていった。しばらくしてから崖の前まで行き、座っていた。

大翔(ひろと)!」

 花丸木さんが息をきらして走ってきた。

「大翔がいなくなったって電話が来て、慌てて来たよ。とりあえず、(れん)達に見つけた事話してくるから、ここにいな、ねっ! 動いたら駄目だよ」

 花丸木さんは風のように来て、風のように去っていった。

 ぼんやりしていると再び戻ってきた。
 蓮と咲良もいる気配がしたけれど振り向きたくなかった。顔を見たくなかった。

 花火で全てを思い出してしまった。

 僕をこの崖から落として、笑いながら見下ろしてきた蓮の顔と、ただ呆然としながら見つめてくる咲良の顔。