蓮に手を引かれ、森を抜けた。まるで迷路のような人混みの中も抜けて、駐車場についた。車の助手席に座る。整っていた浴衣の腰あたりが少し乱れている。けれど一生懸命何回もやり直し、時間をかけて結んだ帯は崩れずに整ったままだった。

「とりあえず、咲良の気持ちが落ち着いてから、車で近くを探そう。花丸木さんも探すって!」
 優しく微笑んでくれた。

 私は頷くと、彼に聞きたかった事を聞こうか迷っていた。忘れようと必死にしていた記憶。都合の悪いことなんて忘れたふりをしてしまえば良いと思っていたから。でも、最近それがただ逃げているように感じてきて、逃げてしまえば楽だけど、ただ逃げていれば良い事なのか、疑問になった。

「あの日、亡くなった大翔と何があったの?」

 ここで質問しないと、もうタイミングが見つからないままな気がしたから、勢いで聞いた。すると、缶コーヒーを飲もうとしていた彼の手は止まりこっちを見た。

「気になるよね」