「大翔が着れる浴衣もあるよ」
花丸木さんは鼻歌を歌いながら灰色の浴衣を着せてくれた。
「いってらっしゃい! 気をつけてね」
僕は咲良と目を合わせると微笑み、同時に頷いて、外に出た。
まだ外は明るくて、ふたりで夕陽の光に包まれながら、公園のベンチに座って、暗くなるのをゆったりした気持ちで待っていた。
その時間さえも、愛しい。
外が暗くなり、会場の近くに移動すると、人がごちゃごちゃしてきた。一番綺麗に見えると評判の場所は物凄く人で溢れていたので、すいている場所を探した。花火が綺麗に見える良い場所を知っている。探している途中からそんな気持ちになって、身体が勝手に進んでいった。
「ちょっと待って! そっちは全く見えないよ」
二歩ぐらい後ろを歩いていた咲良が止めようとしてきた。
「大丈夫。今から行く場所は、なんだかよく分からないけれど、綺麗に見える気がするんだ」
森の中に入った。更に進んでいくと、木と木の隙間からとても綺麗に花火が見えそうな場所があった。ふたりで並んで立つ。
まだ始まらない。誰もいなくて、さらさらと風の音だけが聞こえてくる。隣には咲良がいる。
そっと手を差し出した。すると彼女はふわっと僕の手を握ってくれた。
ずっと手を握っていたかった。カラスの頃からずっと手を繋ぎたかった。夢がひとつ叶った。
花丸木さんは鼻歌を歌いながら灰色の浴衣を着せてくれた。
「いってらっしゃい! 気をつけてね」
僕は咲良と目を合わせると微笑み、同時に頷いて、外に出た。
まだ外は明るくて、ふたりで夕陽の光に包まれながら、公園のベンチに座って、暗くなるのをゆったりした気持ちで待っていた。
その時間さえも、愛しい。
外が暗くなり、会場の近くに移動すると、人がごちゃごちゃしてきた。一番綺麗に見えると評判の場所は物凄く人で溢れていたので、すいている場所を探した。花火が綺麗に見える良い場所を知っている。探している途中からそんな気持ちになって、身体が勝手に進んでいった。
「ちょっと待って! そっちは全く見えないよ」
二歩ぐらい後ろを歩いていた咲良が止めようとしてきた。
「大丈夫。今から行く場所は、なんだかよく分からないけれど、綺麗に見える気がするんだ」
森の中に入った。更に進んでいくと、木と木の隙間からとても綺麗に花火が見えそうな場所があった。ふたりで並んで立つ。
まだ始まらない。誰もいなくて、さらさらと風の音だけが聞こえてくる。隣には咲良がいる。
そっと手を差し出した。すると彼女はふわっと僕の手を握ってくれた。
ずっと手を握っていたかった。カラスの頃からずっと手を繋ぎたかった。夢がひとつ叶った。