「どう? 大丈夫?」

 咲良はひらりと一回転した。白地に桜の花びらが舞っているデザインの浴衣を着ていた。くるっとした時、本当に花びらが舞っているみたいだった。

「好き……」
「えっ?」

 僕の顔は熱くなった。心の中に留めとけば良い言葉を発してしまった。とても可愛かったから。今すぐに抱きしめたいくらいに。

 同時に彼女の顔も紅色に染められていった。

「あっ、この咲良の浴衣がだよ!」

 慌てて嘘をついてしまった。そんな嘘、つかなければ想いが伝わっていたかもしれないのに。確かに浴衣も可愛いけれど、浴衣を含めての咲良が可愛い。

「ふふっ。浴衣でしょ? 分かってるよ! 嬉しい! 頑張って着て良かった! 帯が特に難しかったんだ」

 今、ふわふわと春色の可愛い花達が周りに飛んでいるような、そんな気持ちだった。

 胸が再びぎゅっとして、そこからじわじわとピンク色が身体全体に広がっていく感じがした。