咲良は今も、家の中にいるか、家の周りをさまようだけだった。
「咲良は、みんなみたいに、あちこちどこかへ行ったりしないの?」
僕が質問すると、彼女は
「行けないの。怖いの。きっと私は外の世界が合わないの。ただそれだけ! それにみんなじゃないよ! 他にも沢山、私みたいな人いるよ、きっと」
と、なんだかほつれてしまいそうな表情で言っていた。
また、胸の辺りがぎゅっとした。今度は痛かった。
彼女は、外の世界が合わないって言っていたのに、タブレットというものの中にある、インターネットで、外の世界の、例えば花がいっぱい咲いている映像を流していたり、空だけが写っている写真らを日々沢山眺めていた。
それを僕は隣に座って、静かに、邪魔をしないように見つめていた。タブレットの世界も見ていたけれど、隣の咲良の表情ひとつひとつが気になった。
普段あまり変わらない彼女の表情はころころと変わっていた。
ふと視線を感じたのか、彼女がこっちを見て、口角をきゅっとあげた。
僕も、咲良の真似をして口角をあげた。
彼女が毎日眺めている世界に似ている場所を知っている。
一緒に行きたい。
「咲良は、みんなみたいに、あちこちどこかへ行ったりしないの?」
僕が質問すると、彼女は
「行けないの。怖いの。きっと私は外の世界が合わないの。ただそれだけ! それにみんなじゃないよ! 他にも沢山、私みたいな人いるよ、きっと」
と、なんだかほつれてしまいそうな表情で言っていた。
また、胸の辺りがぎゅっとした。今度は痛かった。
彼女は、外の世界が合わないって言っていたのに、タブレットというものの中にある、インターネットで、外の世界の、例えば花がいっぱい咲いている映像を流していたり、空だけが写っている写真らを日々沢山眺めていた。
それを僕は隣に座って、静かに、邪魔をしないように見つめていた。タブレットの世界も見ていたけれど、隣の咲良の表情ひとつひとつが気になった。
普段あまり変わらない彼女の表情はころころと変わっていた。
ふと視線を感じたのか、彼女がこっちを見て、口角をきゅっとあげた。
僕も、咲良の真似をして口角をあげた。
彼女が毎日眺めている世界に似ている場所を知っている。
一緒に行きたい。