外に出て、おじさんの後を着いて行った。建物の中に入るとテーブルがあちこちにある。
 
 僕がずっと気になっていた女の子がいた。彼女は、四人がけのテーブルの席に座りながら、僕の目をじーっと見つめてきた。彼女は言葉をひと言も話さなかった。

 もうひとりいた。雪の時期におじさんに手袋を貸していた人。その人は立ちながら僕の事を隅から隅まで、舐めまわすように見ていた。

 おじさんのいる方向から、とてもいい香りがした。お腹が鳴る。おじさんは食べ物を持ってきた。

「焼きたてのパンだよ!」

 四人同じテーブルの席に座った。
 おじさんと僕が隣になった。

 一口食べてみた。温かい。ふわっとした感触。お皿の上には色々な形のパンが五つあって、全部綺麗に食べた。

「どうしようね、一緒に暮らす?」

 他に住む場所なんてなかったし、人間として暮らす為には、カラスとして生きていた場所を捨てなければならない。

「少し待ってて貰えますか?」

 僕は外に出た。

 やっぱりいた。カラスの僕の姉さん。
 微動だにせず、こっちをじっと見つめている。しばらくすると、頷いて飛んでいった。

 一年後はどうなるのだろう。カラスに戻ったら、再び姉さんと会話が出来るのだろうか。

 姉さんは、いつも僕を見守ってくれていた。その優しい眼差しで。